篤農青年は叫ぶ より
土に親しみて
赤井川村 瀧本政夫 (二八歳)
世のあらゆる生物は、総て土に生まれ土に生きて再び土に返る、繰り返し繰り返されつ限りなき自然の決まりであります。
是は諸先生方のご指導による事は勿論であるけれ共、堆厩肥の力こそ偉大であります。
進度計であると信じます。
経営組織の合理化栽培技術の改善、販売の統制等もとより研究怠るべきではありませんが、地力の回復こそ先決問題と信じます。
私は六年前はじめて堆肥生産の必要を感じ、又是によって我が村を更生せしむるのが自分の使命なりと信じ、其れよりは草刈に積み込みに寸暇を利用しましたが、何しろ田五町六反、畑一五町、牛馬十余頭、労働成人換算六人五分の経営では余りにも仕事が多く、その結果として堆肥の生産は夜間早朝の作業となり、家族の勤労風習がいっそう加わって参りました。
村民は皆眠りに付き静寂其のものゝ中に此の一鎌が村の為と月の明かりで草を刈る時、総ての雑念は消え去って何とも云われぬ心持がします。青く輝く月はさながら自分の為に夜の世界を照らしてくれるのであると天に対して感謝しつゝ。
緑肥も昭和六年よりべッチ茶小粒大豆を四町位宛栽培して居りますが、初の中は五寸位しか伸びませんでしたが、継続しておりましたので昨年は三尺から五尺位生育していました。然し播種するに当たり多くの労力を費しますので、七年から三年がかりで自動播種機を考案し、今では四町歩の播種を培土をかねて一人にて五日位で出来ますので安心して続けられると思って居ます。
然し本年の生育状況から見まして、前作物との関係を充分考慮せなければならぬ事を知りました。
心なく道ばたに生えている一本の草も皆神様が農民に下された尊い賜なりと信じております。